皆さんは、どのように日々の学習を行っていますか?ノートにマーカーを引いて赤シートで隠し、必死に暗記する…そんな光景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。視覚障害者が、同じように学習を進めようとすると多くの困難があります。
しかし、テクノロジーの進歩が、この状況を大きく変えようとしています。特に、iPadの登場は視覚障害者の学習環境に変化をもたらしています。本記事では、iPadがどのように視覚障害者の学習を変えているのか、その具体的な方法と利点についてご紹介します。
この内容は、2023年8月24日に開催されたつばさの会主催の「iPad活用術セミナー 2023」をもとに構成しています。視覚障害を持つ方々はもちろん、そのご家族や教育関係者の方々にも役立つ情報をお届けします。

従来の視覚補助具とiPad
視覚障害者の多くは、これまで拡大読書機などの視覚補助具や拡大された書籍を使用して学習を行ってきました。毎日、何キロもの重い機器や書籍を持ち運ぶことが当たり前となっています。しかし、iPadの登場により、この状況は大きく変わりつつあります。
従来の視覚補助具とiPadの比較
従来の補助具のメリットとデメリット

メリット
- 公的な試験などでも使用しやすい
- 視覚障害に特化している
デメリット
- 起動性が低い
- 持ち運びが不便
iPadのメリットとデメリット

メリット
- 直感的に使える
- 汎用性が高い
- 持ち運びが便利
- 起動性が高い
デメリット
- 公的な場での利用が難しい
- 使いこなすためにはリサーチ力が必要
iPadは使いこなすのが難しい一面もありますが、汎用性が高く、持ち運びも容易なため、多くの場面で活用できます。エンタメだけでなく、学習にも役立つツールなのです。
デジタル教科書
デジタル教科書の種類と特徴
視覚障害のある学生の多くが、デジタル教科書を利用していることをご存知でしょうか。ここからは、その種類と特徴についてご紹介します。
障害特化のデジタル教科書(UDブラウザ)

メリット
- 無料
- 視覚障害に特化している
- ページ検索機能
- テキス読み上げ機能
- 一部試験でも利用可能
デメリット
- 動作が不安定
- PDF書き出しやプリントが不可
一般的なデジタル教科書(Good Notes)

メリット
- 動作が安定している
- シンプルでありながら多機能
- 拡大鏡機能も搭載
- 複数端末で利用できる
- 圧倒的なユーザー数
デメリット
- 基本有料
- スキャンは自分で行う必要がある
UDブラウザとGood Notesの機能
UDブラウザ

- ページ背景の変更機能


- ページジャンプ機能

- リフロー・読み上げ機能

Good Notes

- 画像・写真・テキストの挿入・プレゼン機能

- マルチウィンドウ機能

- フォルダ管理機能

- 書き出し機能

おすすめアプリと書類スキャン
ノートアプリ
Good Notes 6

- 基本有料(買い切り4080円・1350円/年)
- 多機能でシンプルな使い心地
- 書類のスキャン機能が優秀
- 複数のデバイスで同期可能
メモアプリ

- 完全無料
- Apple純正アプリ
- テキスト編集に最適
- 書類のスキャン機能あり
PDF Expert

- 基本無料
- PDFの読み上げ機能や白黒反転機能がある
- 複数のデバイスで共有可能
辞書アプリ
辞書by 物書堂

- 完全有料(3000~5000円)
- 辞書を購入できるプラットフォーム
- 辞書内の検索機能やマルチウィンドウ機能あり
wishoTouch

- 価格は辞書ごとに異なる
- 高機能な漢字アプリ(手書き検索・音声入力・文字認識など)
ウィズダム

- 完全有料(3000円)
- 英和辞典
暗記アプリ
Anki

- 有料(3500円・WEB版は無料)
- 暗記カードを最適なタイミングで出してくれる
暗記マーカー

- 完全有料(500円)
- 単語を赤シートで隠すようにして、自分専用のテストを作成
書類スキャン
Adobe Scan

- 高精度の文字認識機能
- クラウドに保存される

メモアプリ

- 完全無料
- 書類をカメラでスキャン可能

自炊(スキャナー・裁断機)

- 何百枚もの教科書をスキャン
- 高品質なPDFを作成
自炊とは、自分で書籍をスキャンしてデジタル化することを指します。この方法では、専用のスキャナーと裁断機が必要で、初期費用がかかりますが、大量の書籍を短時間でスキャンでき、スキャンアプリよりも高品質なPDFを作成できるという利点があります。特に、教科書や参考書など、ページ数が多い本のデジタル化をする方におすすめしたいです。
自炊には、UDブラウザなどのあらかじめPDFが用意されているアプリとは異なる利点があります。UDブラウザなどのアプリでは、著作権上の制約により、そのコンテンツを二次利用して課題提出に使用することができません。一方、自炊で作成したPDFは自分で撮影・デジタル化したものなので、著作権法の範囲内で課題提出などの一部二次利用が可能です。
アクセサリー
BoYataのスタンド

- 圧倒的な安定感
- 種類が豊富
私は10種類以上のスタンドを試しきた中で、BoYataのスタンドが一番使いやすいと感じています。最近は盲学校でも導入が増えてきているようです。
弱視の方が資料を見る際、どうしても前かがみになりがちです。その結果、長時間勉強すると姿勢が悪くなり、疲れやすくなってしまいます。しかし、BoYataのスタンドは十分な高さがあるため、この問題を解決してくれます。
このスタンドを使い始めてから、長時間の勉強でも以前ほど疲れなくなりました。姿勢が改善され、学習効率も向上したように感じます。
AnkerのBluetoothキーボード

- 価格が安くiPadに適したキーボード
- 乾電池式で充電ストレスフリー
- Ankerブランド
Magic Trackpad

- スムーズな操作感
- 手元で操作できるので手の負担が少ない
iPad活用術
iPadは、学習や日常生活をより便利にするツールです。ここでは、実際に役立つ活用方法を具体的な事例を元にご紹介します。
英語の授業での活用例
中学校の英語の授業を例に考えてみましょう。通常、紙媒体を使う場合は辞書・教科書・ノートを机に広げる必要があります。しかし、iPadを使えばこれら全てを1台で管理でき、簡単に切り替えられます。
- Good Notes(ノートアプリ):マイクで録音しながらメモを取れます。後で復習する際に便利です。
- UDブラウザ:デジタル教科書を見るのに使います。文字サイズや背景色を自由に調整できるため、自分に合った見やすさにカスタマイズできます。
- ウィズダム英和辞典:キーワード検索で素早く単語の意味を調べられます。例文も豊富で、使える英語の習得に役立ちます。
- wishoTouch:手書き入力で漢字を探せます。漢字を使った言葉も表示されるので、記憶に残りやすくなります。


校外学習での活用例
美術館への訪問を例に考えてみましょう。弱視にとって、作品の細部を確認するのは難しい場合があります。しかし、iPadを活用することで、作品をより間近で楽しむことが可能になります。
- 拡大鏡アプリ:遠くからでも作品を拡大して見ることができます。ただし、美術館によっては撮影が禁止されている場合があるので、事前にスタッフに確認することが大切です。
- UDブラウザやノートアプリ:事前に用意したしおりのPDFファイルを読み込んでおくことで、現地で自由に拡大や背景色の調整が可能です。
- メモアプリやAdobe Scan:その場で配られた資料をすぐにスキャンして、拡大して見たり、音声読み上げ機能を使って聞くことができます。

試験勉強での活用例
共同編集機能の活用
「GoodNotes」というノートアプリには、複数のデバイスで同時に書類を編集できる機能があります。この機能を使えば、友人同士で問題を出し合ったり、答え合わせをすることが簡単にできます。
特に、弱視の方にとっては従来の方法では顔を近づけて見る必要があり、複数人で同時に資料を見ることは難しかったのです。しかし、この機能を使うことで、それぞれが自分の端末で快適に資料を閲覧できるようになります。また、遠隔で指導をお願いする際にも、非常に便利です。
効果的な暗記法
暗記に便利なアプリとして、「暗記マーカー」と「Anki」があります。
「暗記マーカー」は、自作の穴埋め問題を作成できるアプリです。覚えたい単語を隠し、○×で回答すると、マーカーの色が変化します。赤に近いほど正答率が低く、緑に近いほど正答率が高いことを示します。正答率で問題を絞り込んで学習することもできるため、短期間で集中的に記憶したい方におすすめです。

「Anki」は、デジタル化された暗記カードのようなサービスです。インターネット上には周期表など、豊富な共有データがあり、すぐに利用できます。特徴は、最適なタイミングで復習を促してくれる点です。そのおかげで、学んだ内容を長期記憶にしっかりと定着させることができます。コツコツと継続的に学習するのが得意な方に、特におすすめのアプリです。

まとめ
iPadは視覚障害者にとって非常に便利なツールです。従来の補助具に比べ、格段に利便性が高く、学習や日常生活の効率化に大きく役立ちます。特にデジタル教科書やスキャンアプリ、アクセサリーを活用することで、その可能性は無限に広がります。
視覚障害者にとって、iPadは単なるガジェットではなく、学習や日常生活を大きく変える可能性を秘めたツールです。皆さんからも、iPad活用や学習法があれば、ぜひコメントに書いてみてくださいね。
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